『西部邁・日本への警告』

平成30年(2018)1月21日、稀代の思想家、西部邁が自裁した。入水だった。
彼の40年以上にわたる思想活動は、近代主義への懐疑とマルクス主義に代表される進歩主義への疑念に貫かれていた。

本書はそんな西部邁と近かった気鋭の論客が読み解く、稀代の大思想家が身を賭して遺したメッセージである。

2008年4月28日に開催された「主権回復五十六周年記念国民集会」で、「こんなザマで主権回復したなどおこがましい」と壇上で絶叫した西部邁氏。会場の空気に水を差すスピーチではあったが、多くの観衆は喝采した。その背景には、対米追従をよしとする現代の保守論壇に対する痛烈な批判と、日本の自立への強い思いが込められていた。その知の巨人・西部邁氏を偲び、気鋭の論客3人が遺された膨大なテキストを通して現代を読み解く。

西部さんの自裁は、晩年にお書きになられていたことをそのまま実行されたという「意志の力」を非常に強く感じた。知識人の連中たちが、あまりにも安閑とした、堕落した状態だということを再認識させられた気がする。
――西村幸祐

一つひとつの用語や言葉を非常に重要視することが西部邁という思想家の根幹にあって、それが最後まで一貫していた。言葉の定義、あるいは論理の厳密さが保守思想の原点、出発点でもあり、転回点でもあった。
――富岡幸一郎

西部さんは、日本という社会が急速に、言論人や政治家だけではなく、もう回復できないまでに溶解していくような思いがあったのではないか。大衆社会化という、言葉だけでは語れないような空虚さと退廃。それが知識人としての悲劇だったのかもしれない。
――三浦小太郎